榎本竜二郎

課題解決法としてのゴール指向分析(KAOS法)の活用

 今年、いろいろな企業の課題解決の支援をしています。訪問初日に経営者からお聞きする課題は、実際にはそれぞれ多岐に渡っているものの、表現としては似たものが多いです。典型的なのが「従業員の教育」。また、出てくる課題は経営よりのものと現場よりのものが混ざっていたり、そのまま聞いていると矛盾する内容の課題だったりします。

 これらを整理して解決策を一緒に考える際、「ゴール指向分析」というフレームワークが役に立っています。

 ゴール指向分析はIT分野においてシステム開発の際にシステムが実現すべき機能を分析する要求分析の技法として開発されたものです。私はこのゴール指向分析技法の1つである、「KAOS法」の考え方を『課題を分析して解決すべき具体的な問題を見える化する』ために活用しています。

 実務として、まず経営者から課題を提示してもらいます。課題が1つの場合、その課題がクリアされるとしたらそれはどのような要因が揃えばクリアされるかを経営者と共に検討します。(HOW分析)

 一見するとロジックツリーと同様のことをしていますが、MECEではなく、あくまでも「課題がクリアするとしたら、その要因は何か」を考えます。経営者が掲げる課題は他社と同じ内容であることが珍しくありませんが、「どうすればクリアできるか」は企業によってそれぞれ違うため、分析を進めるうちに「当社だけの解決策」となります。

 

 また、この際「複数の要因が併行して必要」(AND要因)という場合と、「これかこれのどっちかは必要」(OR要因)という場合の両方がありますが、これも明記しておきます。

 「HOW分析」は1回だけではなく、さらに深くHOW分析を行い、実行すべき事が明確になるまで掘り下げます。これをしていくと、矛盾することや同時に併行しては実行できない案が出てきます。そのような場合には「実行できない代替案」と見なし、それを採用しなくても実行できる計画があり、なおかつそれを実行することで課題クリアできるための条件が揃うのであれば、計画を具体的にしていきます。

 課題が複数ある場合はそれぞれの課題に対してHOW分析を行います。この際、実行すべき計画が重なったり、矛盾することや同時に併行しては実行できない案が出ることが多くあります。

 実行すべき計画が重なる分には良いのですが、矛盾したり同時に併行しては実行できない案が出て、それらが重要な位置を占めるために課題解決のための実行計画が出せなくなることがあります。

 そのような時には、課題に対して「なぜそれが必要なのか」も考えるようにします。

(WHY分析)

 

 ここでは「それぞれの課題の関係を確認する」「課題のレイヤーを揃える」「課題そのものの代替案を探る」ことを行います。

 往々にして課題は「その時特に困っている問題」であり、経営層だからこその課題から現場の運用に関する課題まで様々です。これらを同じように見るだけでは解決が難しいことがあります。そこで「なぜそれを解決する必要があるのか」を検討します。(最終的には経営目標や経営理念にまで至りますが、段階を経ることに留意します)

 

 これを行うことで、それぞれの課題の関係が見えてきます。また、経営に近い課題が明確になる事で優先順も明確になります。一方、優先順位を付けるのは特定の課題を放棄するということではありません。(why分析)で課題Bの解決方法が課題Aの解決方法と矛盾する場合、課題Bを「なぜ解決する必要があるのか」を検討し、それを新しく課題として課題Bを代替案の1つと見なすことで、課題Bとは違うアプローチからの課題解決方法を探ります。

 

 

 これらは本来のゴール指向分析(KAOS法)の活用方法とは離れていますが、課題解決を経営者と共に検討する際、とても役立っています。