村上 出

働き方改革と、保育園待機児童解消策について

 安倍政権が掲げた「一億総活躍社会」は、今後の我が国の人口減少に伴う労働力の減少を補う策の一つとしての意味合いもあったのだろうと理解しています。また、今年は「働き方改革」と銘打たれ、具体取組み例では「テレワーク」つまり、会社に出社しなくても、自宅等でもネットワークを活用してパソコン等で業務をこなす方法が各企業で推進されようとしています。働き方改革の取組みと相まって取組みが急務となっている保育所の利用拡大取組みに関して考えてみました。

 

【働くことと人生】

  もともと、働き方の見直しや労働力の向上については、自身のライフスタイルとのバランスと言う視点での「ワークライフバランス」が有名ですが、これらと類似の政策も以前から取組みが図られています。例えば、平成11年6月に制定された「男女共同参画社会基本法」は、『男女が、社会の対等な構成員として、自らの意思によって社会のあらゆる分野における活動に参画する機会が確保され、もって男女が均等に政治的、経済的、社会的及び文化的利益を享受することができ、かつ、共に責任を担うべき社会』と定義し、次の5本の柱を実現するためのテーマとして掲げられています。

  • 男女の人権の尊重
  • 国際的協調
  • 社会における制度又は慣行についての配慮
  • 家庭生活における活動と他の活動の両立
  • 政策等の立案及び決定への共同参画

 この様な取組みの結果、『ひとりひとりの豊かな人生』を叶えると言う考えです。

  

【労働力が向上?】

 総務省の7月の調査によれば、15歳~64歳の人口に占める女性の労働力の割合(労働力率)が69.7%に向上したとの速報が発表されました。特に日本特有の「M字カーブ」と言われる、年代別の“M”の谷間に相当する35歳~44歳の労働力率が75.3%と伸びて、10年前に比べてどの年代も谷が底上げされ欧米に近づいてきているとの分析が為されています。これは、先の働き方の多様性などの取組みによる効果が出ているとも考えられます。

 

 ここで神奈川県の実状に目を向けてみると、厚生労働省が本年6月30日に発表した「平成28年版 働く女性の実情」によれば、地域別に見た神奈川県の年代別労働力率のグラフは、以下の通り全国でM字の谷が最も深く、底の値が最も低いと指摘されています(下図左)。また、その原因の可能性の一つとして就業形態として「正規の職員・従業員」の割合が低く、特に「40歳~44歳」以上の年齢階級において、「パート・アルバイト・その他」の割合が高いと分析されています(下図右)。

【神奈川県の傾向について】

 では、神奈川県固有の推移は、どの様な傾向になってきたのでしょうか?

 これまで5年毎に実施された国勢調査結果から、5歳別の年齢階級別就業者数を、10年間隔で20年間の推移状況を右図に示しました。

 

 このグラフでも、神奈川県内の年齢階級別就業者数も、40歳~44歳と45歳~49歳の階級で4万人~8万人程度増加し、「M」字が崩れてきたことが解ります。

 この様に、神奈川県下においても、近年になって子育て中の親世代の就労人口が増えてきていると言う事になります。

 

【保育施設の充足について】

 さて、神奈川県内の保育施設の利用状況は、如何でしょうか?2017年4月1日時点の県内市町村別の保育園待機児童数は、右図の状況でした。

 政令3都市(横浜市・川崎市・相模原市)は、数年前から、保育施設を増やし、子育て世代の就労者の子供が保育施設を利用できる人数を増やす取組みを進めてきた効果が表れ、待機児童“0”ではないにせよ、概ね充足出来るようになってきています。

 また、県西部や三浦市などの一部では、待機児童が発生していない事実も解ります。

 

 一方、上図でも解る通り、県央地区などでは、近年の急速な保育園入所希望者数の増加に対応しきれていない自治体が多く、藤沢市なども保育施設の増加を進めているものの人口増加もあり、待機児童問題が大きな課題となっていることがうかがえます。

 つまり、保育園の待機児童問題は、イタチごっこの状況になっており、対象施設を増やし定員数を増やしても、それ以上に人口や就労希望者が増えており、なかなか待機児童数を解消するには、時間が掛かると言うことが数値データからも解ります。

 

【入園希望の不満軽減策の一方策について】

 入園希望者は、各自治体に申請書を提出し、その入園希望理由や親の就労状況などを申告します。各自治体は、その希望内容に基づき採点(保育指数化)を行い、希望する保育施設への入園可否を判断するのが、大まかな流れとなっています。しかしながら、自治体全体で、保育施設の定員以上に入所希望数があれば待機児童が発生することになります。

 この様な決定方法において、入園可能者が本当に満足しているのか?もしくは、待機児童になった親が少しでも納得できるかは、行政側の取組み課題の一つとも考えられます。

 先月(9/8~9/15)、日本経済新聞の「やさしい経済学」と言う小欄で、大阪大学の宮田洋祐准教授が、マッチング理論が、この不満軽減に役立つと言う寄稿を目にしました。

 要は、ある保育施設の入所を希望する親側と、それを対応させる自治体の判定の仕方に“マッチング理論”つまり組合せの最適解を求める手法が応用できるのではないかと言う提言でした。

 

 いまや待機児童対策問題は全国的な共通課題であり、大きな社会問題にもなっています。待機児童が増える自治体もある一方で、人口減少や過疎に悩んでいる地域があることも事実であり、多面的な情報を見て、どの様に取組むんでいくのかを、自治体側と各家庭の側でも考えて行くことも重要と感じました。