岡 春庭

中小企業の事業承継を考える

 中小企業の経営者の高齢化が益々進んできていることは、各種の統計から見ても明らかである。これは団塊の世代の引退時期に差し掛かった時期を迎え、ますます顕著な傾向を示している。

中小企業庁のデータによると、中規模企業の経営者の平均引退年齢は67.7歳であり、小規模企業の経営者の引退年齢は、なんと70.6歳になっている。中小企業白書によると、事業承継が円滑に進まなかった理由は、次の通りである。

1位 将来の業績低迷が予測され、事業承継に消極的・・・56

2位 後継者を探したが見つからなかった・・・23

3位 事業承継に関して誰にも相談しなかった

4位 事業承継する上で、個人保証や個人財産の担保が障害となった

 

結局のところ、企業の赤字体質や債務過多、そして後継者不在がその最たる原因であると考えられる。

 

 一方事業承継時の現経営者の年齢別に、その後の業績推移を見ると、承継後の業績が良くなった割合は次の通りとなっている。

承継時60歳以上 40

承継時5059歳 43

承継時4049歳 47

承継時40歳未満 60% 

つまり後継者が若いほど事業承継を進めやすく、業績も良くなっているということが分かる。

国においても、中小企業の円滑な事業承継は極めて重要な課題と受け止めており、本年12月に「事業承継ガイドライン」を策定し、次代への支援体制を強化する姿勢を打ち出している。われわれ専門家としても、この問題に真摯に取り組んでいくことが要求されているのではないでしょうか。

 

ところで事業承継に取り組む場合、大きく4つの観点から対策を考える必要があると思われる。一つは、会社の生き延びる道、伸びる道を明らかにし、継ぎたい会社を作る経営面での対策。2つ目は、支配権をいかに確実に承継するかという、会社法の面からの対策。3つめは、相続人の遺留分に配慮して最適な財産配分を考える民法の面からの対策。最後はこれら3つの対策から生み出された最適解の中で、最大限に節税するという税法面からの対策である。これらはどれが欠けても円滑な承継に持っていくことは困難であるが、対策を講じるには順番があるということである。

たとえば自社株の評価が高いので株価引き下げ対策を講じて、持ち株会や第3者に自社株を移すことで大幅な評価の引き下げに成功したとしても、支配権が取れなくなったとしたら言語道断である。遺留分に配慮して事業に供されている資産を、後継者以外に配分したとしたら、これまた承継後の事業の継続が危ぶまれてしまうことになる。

したがって、事業承継をスムーズに進めるには、「経営」から、「会社法」「民法」そして最後に「税法」の順番を原則としていくことが本筋であると考えられる。そうなると各々の分野にすべて精通することは困難であるので、各分野の専門家がタッグを組み対処することが一番効果を発揮するのではないでしょうか。

 

ただ大事なことは、後継者を見つけ教育し、後継者を支える次代の幹部の育成を始める組織力の強化が、最初の出発点になるということです。そして後継者が中心となって次のビジネスモデルを作り上げる経営戦略を明らかにすることができなければ、本当の意味での事業の承継ができないことになると思うのです。

 

最近私どものクライアントから、事業承継の相談がとても多くなっています。内容は様々ですが、それだけこうした経営者の悩みが、顕在化してきていることを感じています。私にとっても対応すべき大きなテーマであることに間違いありません。