企業ヒアリングの結果及び金融仲介の改善に向けた取組み等

 理財課長後藤武彦氏は、金融庁(1998年金融監督庁として発足)の監督・検査方針の変化、金融機関に対し事業性評価をして融資をするようにとの指導、企業へのヒアリング・アンケート結果、金融機関の本来の機能は金融仲介機能であり、それを促進するために金融仲介機能のベンチマーク導入をお話されました。

 

金融庁の監督・検査方針の変化

 金融機関が抱える不良債権問題を解決するため、金融庁発足時の検査・監督の方針は、金融検査マニュアルに沿う形で、ルール重視の事後チェック、厳格な個別資産査定中心の検査、法令遵守確認の徹底でした。これで、不良債権問題が収束しましたが、金融検査マニュアルに基づく機械的なアプローチは、次に示す大きな副作用を生みました。

  • 銀行融資において、借り手の事業内容ではなく、担保・保証があるかといった形式を必要以上に重視
  • 顧客ニーズに即したサービス提供より、金融機関はルール遵守の証拠作りに注力
  • 将来の経営の持続可能性よりも、バランスシート(=過去の経営の結果)の健全性に集中
  • 顧客ニーズの変化への対応よりも、過去のコンプライアンス違反の議論に集中
  • 金融機関の経営全体のなかで真に重要なリスクを議論するのでなく、個別の資産査定に集中
  • 個別の法令違反だけを咎めて、問題発生の根本原因の究明や必要な対策の議論を軽視

事業性評価融資を高めるようにと指導

 金融を巡る環境の変化(例えば、国内における人口減少や国際的な低金利の継続、サービス産業の低生産性の持続、高齢化に向けた国民の資産形成の必要性、顧客ニーズの多様化等)に対し、金融庁は「事業性評価を積極的に行いなさい」と金融機関を指導しました。

 

「事業性評価」とは、財務データや担保・保証に必要以上に依存することなく、取引先企業の事業内容や成長可能性などを適切に評価して行う融資のことです。

 平成27年7月に発行されたパンフレット「円滑な資金供給の促進に向けて」には、「金融機関が目利き能力を発揮して、融資や助言を行い、企業や産業の成長を支援することは、金融機関の果たすべき基本的な役割です。金融庁では、金融機関がこうした役割をしっかりと果たすよう、事業性評価に基づく融資等を促しています。」と記載されていますが、金融機関の行動パターンは変わらなかったようです。以前の金融検査マニュアル重視の体制に戻るかもしれないと思っていたのでしょう。

 

企業へのヒアリング・アンケート結果

 金融庁は、取引金融機関に対する企業の評価を把握するため、面談によるヒアリングや書面によるアンケート調査を実施しました。地域金融機関を評価する声も少なからずありますが、次に示す厳しい声が多数寄せられました。

金融仲介機能のベンチマークの導入へ

 金融機関の存在意義は、金融仲介機能を発揮して取引先企業の成長や地域経済の活性化等に貢献することです。

 融資には、一般的な融資(=財務データと保証・担保で融資可否を決定)と事業性評価の融資(=事業内容や成長可能性等も評価して融資可否を決定)があります。

 一般的な融資では、成長力はあるが、決算書の内容があまりよくない企業の場合、事業に必要な資金が調達できないことがあります。成長力のある企業や、有望な事業計画を有する企業が資金的な援助が得られずに事業計画を実行できなくなると、雇用や地域経済、ひいては日本経済にとってもマイナスです。

 

 2016年(平成28年)9月、金融庁は『金融仲介機能のベンチマーク』を発表しました。ホームページには、「金融機関が、自身の経営理念や事業戦略等にも掲げている金融仲介の質を一層高めていくためには、自身の取組みの進捗状況や課題等について客観的に自己評価をすることが重要である」とあります。

 ベンチマークには、全ての金融機関が金融仲介の取組みの進捗状況や課題等を客観的に評価するために活用可能な「共通ベンチマーク5項目」と、各金融機関が自身の事業戦略やビジネスモデル等を踏まえて選択できる「選択ベンチマーク50項目」があります。

 

 金融機関は、金融仲介機能のベンチマークに基づき、自己点検・評価をし、自身の金融仲介の取組みを積極的かつ具体的に開示することが求められています。

 金融庁は、「各金融機関における取組の進捗状況や課題等について、他の金融機関との比較も含め、出来る限り具体的に把握し、それに基づき、各金融機関が金融仲介の質を高めていけるような、効果的な対話を行っていきたい」としています。

 

 既に、地方銀行では、横浜銀行、東北銀行、山梨中央銀行、・・・・・、第二地方銀行では、東日本銀行、名古屋銀行・・・が公表しています。信用金庫では、北海道内23信用金庫のうち半数にあたる12信金が開示することになっています。

 

 金融仲介機能ベンチマークの自主的な公表で、金融機関同士の競争が、金融機関以外の者も知ることになると思います。5項目の共通ベンチマークを見ると、①経営指標の改善や就業数の増加がみられた取引先数・融資額の推移、②貸付条件変更先の経営改善計画の進捗状況、③金融機関が関与した創業・第二創業の件数、④ライフステージ別の与信先数・融資額、⑤事業性評価に基づく融資を行っている与信先数・融資額、を公表することになります。

 このことから、金融機関は企業に対してコンサルティング業務をきちんとしているのか、金融仲介機能を果たしているのか・・・が自ずと判明してしまいます。企業経営者は、公表されたベンチマーク見て、金融機関を選ぶ時代が来たようです。