地域活性化シンポジウム

地域ブランドによる地域活性化を考える

 3月26日は朝から雨。天気予報では、雨がどうも一日止みそうにもない。第8回「かながわ朝市サミット in HADANO」が、秦野駅前通り商店街ストリートで開催されるのか、と心配しながら小田急電車に乗りました。

 秦野駅北口をぬけると、少しですがざわめきがあり、遠くに幟とテントが見え、ホットしました。商店街ストリートに入ると、2番目のテントに、ボイストレーナーの大村慶子さんを見つけました。

発売予定饅頭『ぴーなっつ ぴーちゃん』の試食会をしていて、饅頭を『どうぞ』と渡され、食べました。落花生餡がなかなか美味しかったです。大村さんは、『ぴーなっつ ピーチャンの歌』を作詞・作曲し、ウクレレを片手に歌いながら、お菓子工房Hadano Sweets季和の栗山さん(写真の左側の方)を応援していました。

秦野が落花生栽培の発祥地!だと初めて知りました。でも、大磯、二宮も発祥地は自分だと主張しているそうです。秦野、大磯、二宮で落花生発祥地のバトルを繰り広げ、大いに話題を盛り上げています。

 

 商店街ストリートにある「JAさわやか館」で、福島大学経済学類教授で地域ブランド戦略研究所代表である西川和明氏をお招きして、シンポジウム「地域ブランドによる地域活性化を考える」が開催されました。広報担当がシンポジウムの模様を報告します。

 

一次産業の割合の高い市町村ほど人口が減少、一次産業があることを魅力にせよ

 2010年の国勢調査の公表を受けて、2012年1月に国立社会保障・人口問題研究所は日本の将来推計人口を発表しました。推計結果のポイントは、以下の通りで示され、少子高齢化による人口減少は避けられません。

①今後わが国では人口減少が進み、平成72(2060)年の推計人口は8,674万人

②人口高齢化が進行し、平成72(2060)年の65歳以上人口割合は39.9%

③長期仮定、合計特殊出生率は1.35、平均寿命は男性84.19年、女性90.93年

 

 2015年の国勢調査によると、神奈川県の人口増加は横浜市と川崎市だけで、33市町村の3分の2にあたる市町村は人口が減少します。人口が減少する市町村の特徴は、三浦市、中井町、山北町のように、一次産業従事者の割合が高いところです。

 

 これを逆手にとった、地域づくりをせよと西川教授は推奨しています。住民たちが自慢できる商品や観光・レジャーが地元にあれば『自分たちのまち』という愛着が生まれ、『まちづくりにつなげる』という意思を持った活動が、ブランドづくりになると話されました。その代表例として、《卵かけごはん醤油【おたまはん】》を話されました。

 

卵かけごはん醤油「おたまはん」の誕生

 卵かけごはん醤油があるのは知っていました。でもそれが過疎村である島根県吉田村(平成16年、吉田村、大東町、加茂町、木次町、飯石郡三刀屋町、掛合町の6町村が合併して雲南市となる)が生み出した商品だと、初めて知りました。

 過疎に悩む吉田村と住民が仕事をつくるという強い意志で「株式会社吉田ふるさと村」(資本金1500万円、従業員6名)を1985年に設立しました。当初の業務内容は、①乾椎茸、笹巻、餅、惣菜類の製造販売、②吉田村郷土資料館の管理業務、③村営バス運転業務、④簡易水道管理業務です。

 ある時、鶏卵業者から「卵が売れない、何か売れるような商品ができないか」と相談されました。「日本人は卵かけごはんが好きだ。」「どうやって食べる?」「かつお節をかけた上に醤油をかけて食べる。」「そういえば、刺身醤油とかはあるけど卵かけごはん専用の醤油がないよね。」「卵かけごはん専用の醤油があるともっと卵を食べてもらえるよね」・・・・。担当者の脳裏に「卵かけごはんにあうしょうゆ」という案がうかびました。

 

 高岡専務(会社設立メンバーの一人)が「無添加で素材のいいものを使って作ろう」とゴーサインを出し、2年かけて卵かけごはん専用の醤油を完成させました。同社の商品の販売先を見た場合、都市部が多く、全体量の3割は関東が占めます。「東京で売れないとダメ」という鉄則があり、モニターを使って市場調査をした結果、関西と関東では醤油の嗜好に違いがあることが分かりました。

 2002年、関西と関東向けに、2種類の卵かけごはん専用醬油「おたまはん」を販売開始しました。さらに盛り上げようと2005年10月には、「日本たまごかけごはんシンポジウム」を開催しました。当日は、村の人口2300人よりも多い2500人も集まりました。以降、毎年シンポジウムを開催しています。

 「株式会社吉田ふるさと村」の初年度の売上は4800万円、「おたまはん」効果があり、2006年度の売上は4億3700万円と10倍近くまでに成長し、1株当たり500円の株主配当を初めて出しました。6人でスタートした従業員は、現在64名と地域の活性化に貢献しています。

 

ブランドには、もう一つのブランドがある

 ブランドには、歴史ある土地・伝統に裏付けされたブランドともう一つのブランドがあります。例えば、京つけもの、加賀野菜などは、歴史ある土地・伝統に裏付けされたブランド。このようなブランドを守る制度に「地域団体商標制度」があります。京都府には宇治茶、北山杉など61件の地域団体商標がありますが、神奈川県には「松嶋サバ」「湯河原温泉」「足柄茶」「横浜中華街」「鎌倉彫」「小田原蒲鉾」「小田原ひもの」の7種類しかありません。こうようなブランドに頼れる地域は一握りです。このようなブランドに頼れない地域は、どのようにしてブランドを創造していくか? これが二つ目の「もう一つのブランド」です。

 

 西川教授は、「ブランドは生産者ではなくユーザーが伝えるもの」、「ユーザーの評価を商品名が体現したものが本来のブランド」だとお話されています。売り手がブランドを付けたとしても、広めるには買い手の力が必要です。買い手の力を借りるには、定跡1:話題づくりと、定跡2:時と客を味方につけて時と客の2次元で商品の新たな価値を創造することだ、と話されています。

 

定跡1 話題づくり

 何でもいいから一番を狙うこと。一番の例として以下を挙げています。それが本物なら口込みで広がることになります。

 ■日本初を狙った「卵かけごはん専用醤油“おたまはん”」

 ■日本最短の賞味期間を狙ったモンブラン「賞味期限・・・なんと60分」

 ■最悪のにおいを狙った「伊豆諸島伝統の味くさや 最悪のにおいも横綱」

 

定跡2 時と客を味方につけて時と客の2次元で商品の新たな価値を創造する

 ア 時間を価値に換えた例として次を挙げています。

輸送日数のハンディを克服 島根県海士町の冷凍イカと岩ガキに、CAS(Cells Alive System)冷凍技術を活用することで、刺身にもできる冷凍イカと岩ガキを首都圏に出荷。2,3日かかる輸送時間を特殊技術で克服する。

雪の下で眠らせて甘みを増す 福島県の河内屋商店 普通なら秋に収穫する野菜を雪の下で眠らせることで、キャベツやニンジンが甘みを増す。

 

 イ 客を味方につけた例として次を挙げています。

和郷園の信頼できる野菜づくり 無農薬で野菜づくりをするために虫のつきにくい冬季栽培をしていたが、スーパーから通年で野菜を供給して欲しいとの要望に応えるためGAP(Good Agricultural Practice)を取得し、四季を通じて減農薬野菜を提供する。

 

もう一つのブランドをつくるには、定年退職者の活用が鍵

 平成22年、獨協大学高松和幸教授は、東京近郊の「ベッドタウンにおける定年退職者の生きがいに関する調査・研究」を発表しました。それによると、何らかの理由で働きたい意欲を持つ前期高齢者(65~74歳)は、半数近くいます(①+②+③)。

 地域ブランドで地域を活性化するには、元気な定年退職者を引っ張り出し、活用するのが鍵だと、西川教授は話されています。