平成26年度 経営・労働シンポジウム

 平成26年度の経営・労働シンポジウムは11月17日(13時30分~16時30分)神奈川中小企業センターにて開催されました。

 第1部は、「会社はだれのものか」という題で、坂本光司教授(法政大学大学院政策創造研究科)による基調講演、第2部は「人を大切にする経営」というテーマでパネルディスカッションがなされました。(株)大協製作所(http://www.daikyo-inc.co.jp/)代表取締役社長栗原敏郎氏と(株)マーク電子(http://www.markd.co.jp/)代表取締役社長村山忠雄氏がパネラーとして参加され、坂本教授のリードのもと、「人を大切にする経営」をご披露して頂きました。ここでは、坂本教授が話された基調講演の一部を紹介させて頂きます

 坂本教授は、いきなり出席者に「会社はだれのものですか」と投げかけられました。一瞬の沈黙のあと、教授はおもむろに「会社は株主のものではないし、社員のものでも、社長のものでもない。みんな間違えている。会社は『社会』みんなのものだ。」と話されました。

「お客様のために商品やサービスを提供するのは社員。お客様の役に立つ商品を考えるのも社員なら、お客様に心のこもったサービスをするのも社員。お客様を大切にするには、まず社員を大切にしなければならない。社員を大切にするには、その家族を幸せにする必要がある。つまり、会社の目的は社員を幸せに、そしてその家族を幸せにすること。会社や上司に不平不満や不信感を持つ社員は、業績を高める努力なんてしない。幸せである社員が働いた結果として会社の業績が高まり、市場での優位性を獲得できる。」という好循環サイクルが働くのだと、教授のお話に耳を傾けながら思いました。

 教授はこれまでに実際に約7000社を訪問し、経営者から直接に、お話をおうかがいしている。そのなかで、「社員を幸せにする経営」を実践している会社を、700社ほど見つけたそうです。

本基調講演で、「いい会社100の経営指標」をご披露して頂きました。10の大項目と、各大項目が10の小項目で構成されています。1小項目を1点とカウントされますので、満点が100点になります。

 「人を幸せにする経営」を顕彰するため、教授は「日本でいちばんたいせつにしたい会社」大賞を創設しました。本賞における「人」を、1従業員とその家族、2外注先・仕入先、3顧客、4地域社会、5株主の5者と定義しています。人を幸せにすれば結果的に業績も上がるはず、そんな大切な会社を1社でも増やしたいという思いで顕彰制度をスタートさせたそうです。

(ホームページ:http://taisetu-taisyo.jimdo.com/)

ご講演の中で、「いい会社の100の経営指標」の小項目を取り上げて、代表的な会社のエピソードを話して頂きました。以下は、エピソードの一端です。

社員一人当たりの月間平均所定外労働時間は10時間以下である(大項目の3)

未来工業 残業禁止でも残業をする人がいたため、残業したら罰金をとることにしたら残業をする人がいなくなったそうです。

沢根スプリング 第4回大賞の「中小企業庁長官賞」を受賞。所定外労働時間を6時間未満としながら、IT活用や通販に取組み、創業以来47期連続で黒字を続けている。

 

定年年齢は66歳以上、または定年制度そのものがない(大項目の4)

西島株式会社 社員150人弱の工作機械メーカー。定年制度はなく、自ら限界を感じたら辞める隠退制度。高齢者はラインの長でなく、経験や技能を若者に伝授する役。

 

社員が病気や事故で就業できなくなっても、1年以上現給を支給したり、社員の福利厚生を全額支給する制度がある。また社員が死亡した場合、その子供が大学を卒業するまで、補助金の支給等、その生活を支援するハートフルな制度がある(大項目の7)

樹研工業 60歳の社員が病気になって、3年間、会社に1日も出て来なかったが、解雇せず、給料とボーナスを病院へ届けたとのこと。先輩がいろいろと教えてくれたのだからと、社員が決めたそうです。

 

過去5年以上、人員整理等(リストラ)は一切していない(大項目の1)

阿部長商店 東日本大震災で気仙沼市内の9つの水産・食品加工工場・冷蔵施設のうち8つを津波で流失した。従業員800人のうち、8~9割が働く場がない。『解雇をすれば、雇用保険制度を適用して国が面倒を見る』と行政からは解雇を勧められた。災害時にできた絆を壊したくないという思いで、1人も解雇せず、休職扱いで乗り切ったそうです。

 

不況時には経営者が社内の誰よりも率先し大幅に給与を削減する(大項目の5)

櫻井精技 2008年のリーマンショックの余波で売上高が7割減。社長の給料を1ドルに下げ、管理職も下げてもらったが、一般社員の給料は1円も下げなかった。社員は、1日も早く社長の給料を上げねばと頑張り、1年で業績を回復させたそうです。

 

経営者は意思疎通を図るため、全社員とのノミュニケーション(食事会等)に積極的に参加している(大項目の5)

アイエスエフネット 青山にある人にやさしいIT企業。2千名の社員のおよそ3~4割は障がい者やニートフリーターあるいはシングルマザーといった社会的弱者。課長になると、夫婦で社長と食事をする会があり、「主人が当社を辞めるなら、私は主人と離婚します。」と社員の奥さんが語ったエピソードがあるそうです。

 

現在障がい者を雇用している(大項目の4)

上場企業の社長から「・・・・わが社には障がい者ができるような仕事がほとんどありません。・・・」という手紙を頂いたそうです。数か月後に、工場を見て回ったあと「障がい者の仕事は限られていることは分かるが、工程を分割すれば障がい者でも十分可能と思われる。それでも困難だと云うなら、障がい者に見合った新しい仕事をあえてつくるべき。」とアドバイスしたそうです。                          

(文責:広報